テーマ [風の道:アジアの流れと交差点]
ANBD 2025 済州特別展は、済州島いう特別な場所で開催されます。アジア各地域の芸術とデザインが交わり、多彩な文化が繰り広げられる饗宴の場となるでしょう。
済州の象徴である「風」は、絶え間なく吹き続けることとして有名です。この「風」は済州の新たな文化を切り開き、この島の多様な衣食住を伝える自然の象徴ともいえます。今回の展示では、済州で、アジア各地域の伝統と現代の文化が出会い、新たなつながりを探求する場となるでしょう。作品を通し、自然・人・そして文化が相互に影響し合うことでアジアという広大で文化的な文脈をお互いが認識し、交流へと発展していくことが期待されます。
報告者:李知恩
2025済州特別展には、ソウル、東京、台北、台南、バンコク、クアラルンプールなどアジアの主要都市から、21名のアーティストとデザイナーが参加し、国境や言語、メディアの枠を越えて、今を生きるアジアのリアリティと未来を感じさせる展示となりました。
初日(5月9日)はあいにくの悪天候に見舞われ、当初予定していたオープニングセレモニーは変更を余儀なくされましたが、参加者全員が無事に済州島に到着し、安堵の中での夕食会となりました。夜が深まるにつれ、参加者同士がテーブルを囲みながら交流を深め、作品のコンセプトや制作背景、各大学での教育の変化など、活発な情報交換が行われました。
オープニングセレモニーは翌日の午前中に済州西帰浦芸術の殿堂で開催されました。素晴らしいギャラリーでの式典では、各地域からの参加者を代表して挨拶が行われ、個展作家によるギャラリートークも語られました。その後は、旧軍事施設をリノベーションした没入型デジタルアート空間である「光のバンカー」済州の自然保護区域にある人気の森林トレッキングコースである「サリョニの森の道」済州島の伝統的な生活文化を保存・再現した屋外博物館で、19世紀末から20世紀初頭の農村や漁村の生活様式を体感できる「済州の民族村」を巡るツアーも無事実施され、参加者一人ひとりにとって充実した時間となりました。
さらに今回の特別展では、済州を象徴する石像「トルハルバン」をモチーフにした、折り紙で作られたオリジナルの時計が、参加者への記念品として贈呈されました。
※5月22日付で特別展の受賞者が発表されました。残念ではございますが、今回は日本からの受賞者はございませんでした。詳しくは、以下のURLにてご確認いただけますので、ぜひご覧ください。
2025 ANBD JEJU SPECIAL EXHIBITION Final Report
報告者:笠井則幸
今回展示が開催された「西帰浦芸術の殿堂」チェジュ島の南に位置する海沿いの街です。チェジュ国際空港から山を抜け1時間ほどの南にあり、沖縄や石垣島などをイメージせる緑と海を身近に感じられる場所です。近くには昔ながらの商店街もあり自然の中にも地元の人々の活気を感じる街でした。
初日(5月9日)に予定していたオープニングセレモニーは強風と雨という悪天候のため、当日現地に入るメンバーの飛行機遅延のため、翌日5月10日(土)に午前中にオープニングを延期することになりました。チェジュ島は今回の特別展のテーマ通り、風が絶え間なく吹く島と知られ、この日はメンバーが身をもって体験することになりました。この日は夜にはANBDのメンバーとチェジュの特産である海産を中心とした夕食に舌鼓を打ち参加者との交流を深めた夜となりました。
二日目(5月10日)は快晴、午前中に無事オープニングが開催されました。展示会場の「西帰浦芸術の殿堂」はチェジュの名峰である漢拏山(ハルランサン)が眺めることが出来る海沿いにあり、風光明媚そして風を体験できる場所でした。韓国、マレーシア、日本の各地域の代表者がオープニングに参加し、個展作家によるギャラリートークが行なわれました。個展作家のトークを聞くことでより作品制作の意味やコンセプトが理解でき、有意義な時間を過ごせました。またANBDの特徴である様々な国や文化の交流が展示作品とギャラリートークを通じで行われたことは、非常に意義のあることと感じました。展示会場は白い空間で統一され広々としたギャラリーで個展会場と共通展会場が、うまく分かれるようにレイアウトされ、鑑賞者にとっても非常に見やすい展示の工夫がされていることも印象的でした。
その後、エクスカーションとして、デジタルアート空間である「光のバンカー」済州の自然保護区域にある人気の森林トレッキングコースである「サリョニの森の道」、「済州の民族村」を巡りました。ANDソウルのメンバーの大変な尽力を感謝するとともに強い繋がりを感じる特別展となりました。
報告者:花輪大輔
李先生や笠井先生の報告と重なるところもありますが、ご容赦ください。
5月9日(金)に関西空港経由で済州島に入りました。
今回の特別展では韓国をはじめ台湾、タイなどの多数の国から団体展121名、個展5名(うち日本からは団体展11名、個展1名)の参加がありました。現地オープニングには30名を超えるアーティスト・デザイナーが参加されました.
個人の感覚の域は出ませんが、台湾やタイなどの南方の国々からの作品には、日本ではあまり見かけないような彩りの作品が多いように感じます。今回の特別展のテーマは「風の道:アジアの流れと交差点」ということで、各国から出展された作品から大きな刺激を受けました。
会場も素晴らしく、美術館をはじめ、オペラハウスや芸術資料館、野外劇場を備えた韓国最高の複合文化芸術空間といわれる西帰浦(ソギポ)「芸術の殿堂イェスレジョンダン」のギャラリーで開催されました。
オープニングではテープカット、記念写真撮影に続いて、現在のチェアパーソンである漢城大学(ソウル)のKim,Jeehyum先生からのご挨拶ののち、個展のギャラリートークとなりました。英語でのトークに若干緊張されていましたが、玉川大学の博多哲也先生先生がトップバッターを立派に務められました。
同じ東アジア文化圏ではありますが、異なる日常、それぞれの文化に根ざした作品、そして各国からの参加者との交流は、実に深い学びを提供してくれます。
私はこれまで通常展にしか参加した経験がなく、はじめての特別展でしたが、とても充実した機会となりました。
※前夜祭では太刀魚のお刺身が素晴らしく、レセプションでいただいた済州島名産の「黒豚」には衝撃を受けました。
※エクスカーションでは「光のバンカー」ミュージアムを訪れました。ここは廃墟となっていたかつての国有通信機関施設(恐らく軍事施設)が没入型メディアアート施設として生まれ変わった場所と知りました。まさにAN BDにとってふさわしい場所であったと思います。
没入型メディアアートはチーム・ラボや昨年ではモネ、一昨年ではゴッホの展示を経験していましたが、あまりのスケールの大きさに新たな感動を覚えました。特に「ワシリー・カンディンスキー」の作品映像が巨大な空間に映し出された壮大な映像体験には圧倒されました。カップルや小さな子供を連れの家族も多数いましたが、じっくりと映像作品を鑑賞する姿が印象的でした。
今回も中国からの参加が難しかったことは残念ですが、世界規模での分断と暴力の連鎖が懸念される中で、デザイン・アートで様々な問題を乗り越えようとするANBDによる芸術文化交流は実に意義深い活動であると感じます。今年度のメイン展は武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパスでの開催となります。
是非、皆さんにも足を運んでいただき、喜びの共有ができることをご期待申し上げます。
追伸
さらに今回の特別展では、済州を象徴する石像「トルハルバン」をモチーフにした、折り紙で作られたオリジナルの時計が、参加者への記念品として贈呈されました」の下です。